024Martin D-28 バインディング剥がれの修理
160年以上前に誕生した世界初の人工プラスチック「セルロイド」は、加熱による加工性の良さや、独特な艶と発色の美しさにより、メガネフレーム 万年筆の軸 ボタン ビリヤード玉 ピンポン玉 写真フィルムなどの様々な製品に使用されていました。しかし、極めて可燃性が高く危険なことから、世界的に排斥の流れとなり、さらに高性能なプラスチックの登場によって、今ではほとんど使われなくなりました。
そんなセルロイドは、もともと象牙の代用品としてボディ外周の装飾に使用されるようになりました。ギターを嗜んでいると、装飾材やピックの素材としてセルロイドに触れる機会は多く親しみがありますが、一般的にはかなり珍しいことなんです。
タバコを吸っていた頃に、興味本位でピックにライターで火を点けてみたことがありますが…、ビックリするほど一瞬で燃えてなくなります。決してマネしないでください。
セルロイド雑学はそのくらいにしておいて、お預かりしたMartin D-28 のリペアに移ります。
画像ではご確認頂けませんが、実はボディのくびれより上側の広範囲でバインディングが剥がれています。
セルロイドは、経年変化で縮む特性があるため、バインディングの全長がボディ外周より短くなり、ショルダー部やウエストのくびれ部など曲がりの大きい部分にストレスが生じ、浮き上がりや剥がれが起こります。
ヴィンテージから新品までを問わず、なぜかMartinのギターで頻出する問題です。あと少しで創業200年を迎えようという老舗ですから、改善できないはずはないと思うのですが…
もちろん剥がれが起こらない個体の方がずっと多い訳ですから、過剰に心配する必要はありません。事前に知識があれば、問題が起こっても慌てることなく対処できると思います。
リペア手順は下記のように進めます。
接着
マスキング
希釈していない塗料を隙間や段差に入れて埋める
紙やすりで番手を上げながら下地をつくる
ラッカー塗装
バフ掛け研磨
作業の様子をダイジェストでご覧ください。
元通り綺麗に直りましたので、気にすることなく弾き続けて頂けると思います。
同様にお困りの方がおられましたらご相談ください。
[作業内容]
セルバインディング剥がれ修理 30,000円
部位や症状により価格は変わる場合があります。