こちらのGibson L-5は、少し珍しい経緯でお預かりさせて頂きました。受け取った時点では、電装系やハードウエアが取り外され、ボディトップの割れや塗装の劣化が各部に見られ、修理の作業途中でした。


お客様が某ギターショップに修理を依頼され、途中まで作業を進めたものの頓挫してしまい、長期間そのままになり諦めかけられていたところを、縁があって弊社にご相談を頂いたので作業を引き継ぐことになりました。


なお、お預かり以前の詳しい経緯は分かりませんが、このギターは本来はネック側にP-90が1つ搭載されていたモデルのようです。ハムバッカーサイズに穴が加工してあり、ブリッジピックアップ トグルスイッチ ポット類も後から増設されています。


それでは、作業前の各部の状態をチェックしていきましょう。


ヘッドの塗装はひび割れており、バインディングも浮いて剥がれかけています。

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ネック裏の塗装は変質しており、こすると消しゴムカスのようにボロボロと剥がれてきます。

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トップに割れがあり、修理の途中になっています。

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別角度から。ピックアップキャピティが加工されているのが分かります。

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まずは表面の塗装を剥がしていきます。

アーチトップのギターは、ほとんど曲面で構成されているため、サンダーなどの機械を使用して塗装を剥がすことが難しく、手作業で根気よく塗装を落とします。

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表面のひび割れや凹凸を取り除き、割れやキズを補修しました。

次に、表面を平滑に整えた後、塗装の密着を高めるために下塗りを終えたところです。

サンバーストの着色とトップコートを塗り重ね、バフ掛けして磨き上げ、塗装作業は終了です。

続いては、電装系を組み込んでいきます。

ピックアップは問題なく動作していますが、その他のパーツはサビも多く信頼性に欠けそうなので、すべて交換します。

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新しいパーツを用意して、どんどん配線をハンダ付けしていきます。

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配線のハンダ付けを終えたところです。(元のパーツをなるべく使ってほしいとの希望があったので、トーンコンデンサーは元のを外して使いました。)

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フルアコやセミアコは、ボディの外ですべての配線を組んでから、紐やワイヤーを屈指して、小さなブリッジピックアップの穴からボディ内部へ引き込みます。この作業には一日分の精神力と集中力を消費します。もし、取り付けてから音が出なければ、もう一度すべてをボディの外に引き出してやり直しになってしまいます。絶対に一発で決めたいので、何度も入念にテスターで導通チェックを行いました。

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無事に配線作業を終えることができたので、ゴールが見えてきました。

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ピックガードやハードウエアを取り付けて弦を張り、一通りの弦高調整をおこなったら…、3ヶ月に渡った作業がついに完成です。一度は諦められそうになったギターに、息吹が戻りました。


「ご主人に再び弾かれる時を待ちきれない。」

ギターからはそんな音がしています。


どうぞ、仕上がりをご覧ください。

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