017National 1155 の弦高調整
Nationalが50年代頃に生産していたフラットトップです。Nationalといえばリゾネーターギターを思い浮かべる方も多いと思いますが、フラットトップやエレキギターも生産していたメーカーです。このモデルは、GibsonがJ-45/J-50用のボディをパーツ提供しており、Nationalによってボルトオンネックを組み合わせて製造されたモデルです。
調整前の弦高は、6弦3.0mm/1弦2.8mmと高めで、ネックが順反りしていました。また、プレーン弦の響きが巻き弦に比べて貧弱だと感じられており、弾き心地とサウンド両面で改善できればというご要望です。
弦高に関わる作業として、このギターのネックにはトラスロッドが備わっておりませんので、ネックアイロンで熱を加えて順反りを矯正して、音詰まりが無いようにフレットを擦り合わせました。また、弦高が下がったことで音詰まりやビビリが現れたため、フレットの擦り合わせとナット交換を行いました。
サウンド改善の作業として、やや丸みがあったサドルの山の形状を、サドルと弦が点で接するように鋭角に削り直しました。加えて、サドルからボディへ弦振動の伝達効率を少しでも稼ぐため、ブリッジピン穴にガイド溝を設けました。ややボケていた音像がくっきりとして、巻き弦に負けない響きになったと思います。
抱えて弾いていると、腹に響いてくる低音の力強さはGibson J-45に通じるものがあり、経年による熟成を感じさせる深みのある乾いた響きが心地よく、ネックの構造に由来するであろう独自のキャラクターも感じられます。
個性的な外観に加えて、刻まれたウェザーチェックや細かなキズさえも、どのような人の手を経て現在に至るのかを想像させるロマンがあります。
[作業内容]
ナット製作(牛骨) 7,000円
フレット擦り合わせ 6,000円
ネックアイロン矯正 10,000円
サドル鋭角成型 3,000円
ブリッジガイド溝 5,000円
弦代金