このギターのオーナー様は、ギターのどこかに不都合を感じられているわけではなく、一通りチェックして最適な状態にしてほしいというご依頼内容でした。

このようなご相談を頂く方は、常に最高のパフォーマンスを発揮するために備える、意識の高いプレイヤーかもしれません。または、自分ではコンディションの判断ができないため、お任せでメンテナンスを受けることで安心したいタイプなのかもしれません。理由は何であれ、人間ドックや車検と同じように考えて、気軽に点検を受けて頂くことは、コンディション維持にとても有効です。


Furch OM23-CRCT は、抱えやすいサイズのボディ全体を隅々まで響かせて、シダートップの柔らかなサウンドを生み出します。コントローラブルでダイレクトな反応が得られるため、フィンガーピッカーに支持されるモデルのひとつです。

お預かりした状態では、ネックがわずかに逆反りしており、弦高は6弦2.2mm 1弦1.7mmと低めです。

works 033-21200px.jpg

特に気になるビビリは出ないとのことでしたので、このままお使い頂くこともできますが、意識的に少し強いアタックで弾くと音詰まりがあります。また、ダウンチューニングでもプレイされるなら、さらに逆反りして弦高が下がるため、さすがに各所にビビリが出てきます。

works 033-31200px.jpg

トラスロッドを15~20度ほどわずかに緩めて、ネックをストレートにしました。

works 033-41200px.jpg

その結果、弦高は6弦2.4mm 1弦1.9mmになりました。弦高の数値だけを見れば、これで十分に弾きやすいと感じられる方もいるはずです。たた、ずっとこのギターを弾き続けているオーナー様にとっては、0.2mmが違和感につながる可能性もあります。

works 033-51200px.jpg
works 033-61200px.jpg

ナットとサドルの高さを微調整して、違和感がないように最適化していきます。

works 033-71200px.jpg

最終的にレギュラーチューニング時の弦高は、6弦2.3mm 1弦1.8mmとしました。このままチューニングをDADGADにした場合は、ネックがわずかに逆反りし、弦高は6弦2.1mm 1弦1.6mmまで下がりますが、目立つビビリはなく実用レベルです。

650mmスケールのギターにライトゲージを張り、レギュラーチューニングをメインでプレイされる場合、このセッティングがフィンガーピッカーには最もご好評頂いています。

弦が張られている状態では掃除ができない、ヘッドや指板の汚れが気になったのでクリーニングして完成です。

低めの弦高でもビビリが出ずに、フレットの擦り合わせも不要だったことは、このギター本来の状態の良さにあると思います。今回のような調整では、劇的な改善や変化は感じにくいでしょう。しかし、些細なストレスを感じることなく、気持ちよくプレイに没頭して頂けることにつながるはずです。

[作業内容]

Aメンテナンス 7,000円

Previous
Previous

034Bメンテナンス(Maton EM100-808)

Next
Next

032古より伝わりしナットのチューンナップ法