035Gibson J-45ネックアイロンを使用した反りの修正
トラスロッドは、ネック内部に通っている長い鉄の棒のようなもので、その端にネジが切ってあります。専用のレンチでそのネジを回すと、棒の全長が短くなり(曲がり)ます。その曲がりの反発力がネックに作用して、ネックの反りが矯正されるという仕組みです。
トラスロッドの調整力は、ネジの切られている可動範囲となりますので、完全に締めきっても順反りしている場合や、完全に緩めきっても逆反りしている場合は、それ以上の調整力はありません。
そのようにトラスロッドの調整力の限界を超える症状があるギターや、クラシックギターのような調整機能をもともと持たないギターのネックの反りは、アイロンにり熱を加えて矯正する方法をとります。
作業前の状態を確認していきましょう。
レギュラーチューニング相当まで弦の張力を与えて、トラスロットは緩めきった状態ですが、12フレット上の弦高は6弦0.8mm 1弦0mmです。弦とフレットがほぼ接触しており音が鳴りません。
ネックはやや順反りしているくらいが良く、軽くトラスロットを締めてストレートにしている状態が理想的なので、ネックアイロンを使用して逆反りを順反りにまで矯正をしていきます。
これがネックアイロンを装着したギターです。
金属の箱の内部に熱源があり、高温になった箱全体の熱が、じんわりネックに伝わります。
専用の万力で、ネックの根元側をしっかりとアイロンに固定します。
今回は12フレット位置に枕木をかまして支点とします。
ナット側にも万力を取り付け、アイロンにネックを引き付けるような力を与え、順反りになるように曲げます。力の関係を表すと下の画像のようなイメージになります。
大きな反りを一気に曲げて矯正しようとすればネックを破損しかねないため、慎重に効果を確認しながら、何度も着脱を繰り返して作業を進めます。数日かかる場合もあります。
3度のネックアイロンを繰り返して、トラスロッドを緩めた状態でやや順反り、弦高が6弦2.4mm 1弦2.0mmとなりました。
さらにここからトラスロッドによる微調整を行い、ナットとサドルの高さ調整も済ませ、最終的な弦高は6弦2.3mm1弦1.7mmに設定しました。
全く音が鳴らなかった状態でしたが、J-45らしい低音の効いたパワフルなサウンドを聴くことができるようになりました。
[作業内容]
ネックアイロン 10,000円
ナット溝修正 3,000円
ブリッジサドル修正 3,000円