065サドル&ブリッジの調整でサウンドを引き出す(Martin / D-28)
お持ち頂いたMartin / D-28の一通りのメンテナンスとあわせて、「もう少しハッキリ明瞭なサウンドが欲しい」というリクエストがありました。
メンテナンスによって、ギターサウンドのキャラクターを変えることはできませんが、本来のキャラクターが発揮される状態に整えることはできますので、その観点から改善を試みたいと思います。
数あるギターを構成するパーツの中でも「明瞭さ」つまり発音に関わるのは、音の源である弦と、その振動を直に受け取るフレットとサドルが大きな役割を担っています。特にサドル周辺に着目しました。
この個体のサドルは、純正のミカルタではなく、牛骨に交換されています。素材としては牛骨の方がやや硬く、音も少し硬質になるので、素材選びの方向性に間違いはないと思います。ただ、よく見ると、弦と接するサドルの頂点が、丸みを帯びた形状になっていました。これを鋭角に削りだすことで、改善の余地がありそうです。あわせて、サドルからブリッジピンへ向かう弦の角度を付けるため、ガイド溝を掘ることにしました。
作業の様子と、ビフォーアフターのサウンドチェックをご覧ください。
繊細な音の変化を動画でお伝えするのは難しいですが、少しスッキリして煌びやかさが出ているように感じました。お客様に店頭で仕上がりをご確認頂いた際には、大変喜んで頂けたので良かったです。
一つ一つのパーツの改善では、違いが分からないほど僅かな変化しか生み出しませんが、その積み重ねがギターサウンド全体の印象へとつながっています。小さな変化を楽しみながら、更なる高みを目指す、いかにも趣味の世界という感じがしますね。
[作業内容]
Bメンテナンス(サドル成型込み) 12,000円
ブリッジガイド溝 5,000円
弦代金