062国産ストラトタイプのAメンテナンス(MOMOSE / VINTAGE STタイプ)
本家であるFender / Stratocasterに対して、その他のメーカーが製作する、いわゆるストラト”タイプ”のギターがあります。志があまり高くない安価なコピー品から、本家を凌駕するほどのハイエンドモデルまで、あらゆるバリエーションが存在しています。
タイプものは、定型フォーマットに沿って製作されるため、大きく見ればよく似たギターになります。ただ、同じギターが作られるだけなら、遠回りせずに本家を買えば良いだけのことです。そこには、逸脱しない範囲でそれぞれのメーカーが工夫を凝らし、差別化を図りながら異なる価値を与えています。そういった創意工夫のない単なる模倣品であれば、ユーザーの心に響かずにどんどん淘汰されていきます。
古くから続く日本のギターメーカーも、米国製ギターの研究と模倣からスタートしており、今では独自性を確立しているところが多いです。
MOMOSEのVintageシリーズ ストラトタイプのメンテナンスを承りました。
手に取った瞬間に伝わるのは、日本人の繊細な感性に通じるような、細部の作り込みや仕上げの良さでした。やや大雑把なつくりや、それも含めて魅力だとして許される気配を持った米国製のギターに慣れ親しんでいると、ちょっと過剰なほどに仕事が丁寧です。
細かい部分ですので、画像や言葉ではお伝えすることが難しいですが、調整作業をしながらご覧頂こうと思います。
ナットは牛骨製です。
綺麗に面取りされ、ピカピカに磨き上げられています。溝の深さも適切で、このままでも押さえづらいことはありません。
6弦の指板からの高さは2.0mmでした。ちなみに、フレットはJESCAR #55090-NS(高さ1.4mm)を使用しています。
弦高低めのご希望でしたので、各弦の溝を0.1~0.2mmほど削りました。
トレモロユニットはGOTOH製です。
サドルの一つ一つまで綺麗に面取りされています。パーツ同士には余分な遊びやガタツキは無いですが、各部のネジやトレモロの動き自体は非常にスムーズです。
調整前のサドルの様子
調整後のサドルの様子
ナットとのバランスをとるため、サドルの高さも少しだけ下げました。
別角度から 調整前
調整後
低音弦のピッチ調整を、12フレットではなく、使用頻度と実用性を重視して5フレットに合わせています。
当店での調整作業前であっても、指板のラジアスにしっかり合わせてサドル高さ設定されており、オクターブピッチが正確に合っていました。そんなことは当たり前だと思われるかもしれませんが、工場出荷時の状態で、それができているメーカーは数えるほどしかありません。他にも、フレットのエッジの処理や、電装系の丁寧な配線などにも、手抜きや妥協は見られませんでした。
メンテナンス作業を終えてから、MOMOSEのホームページを見ましたが、「ギター1本1本を熟練クラフトマンが製作し送り出している」というような文章が書かれていました。ありふれたキャッチコピーのようですが、私はギターに触れることで、彼らのギターに対する責任や誇りを感じることができましたので、嘘偽りや誇張のない真実だと思います。
要するに、はじめから仕上げの良いギターは、調整のご依頼を頂いても、作業していて気持ちが良く、実際の内容もすこし楽です…
[作業内容]
Aメンテナンス 7,000円
弦代金