指板のラジアスの話。

ラジアス(radius)とは半径のこと。

例えば10inchラジアスの指板とは、1弦から6弦にかけて指板に付けられているカーブが、半径10inchの円弧であるという意味です。数字が小さいほどカーブが強くなります。

クラシックギターは、カーブがほとんどないフラットな指板を採用しています。スチールギターが登場すると、年代とともに徐々にカーブが付けられるようになりました。

そして1950年代。

Fender製のヴィンテージギターおよび現在生産されているヴィンテージスタイルのギターは、7.25inch (184mm)と非常に強くカーブした指板を採用しています。

当時のギターはコードを押さえてリズムを弾くことが主体であり、より強く指板がカーブさせたほうが、セーハする際に左手に沿いやすく押さえやすいと考えたのでしょう。Fenderらしいエルゴノミックな改良だったと思います。

時が流れて1960年代も後半になると、ロックミュージックがポップカルチャーの中心となり、ギターが脇役からバンドの花形となりました。流麗なメロディを奏でたり、チョーキングしながら情熱的なビブラートをつけるようなプレイが求められます。

するとどうでしょう。

コードが押さえやすいくらいに弦高調整されたFenderギター達は、15フレット付近の1・2弦をチョーキングすると音が詰まるようになりました。

ここで各社が採用する代表的なラジアスを書いておきます。

Fender(Vintage) 7.25inch(184mm)

Fender(Modern) 9.5inch(241mm)

Suhr 9~12inch

PRS 10inch(254mm)

Gibson 12inch(305mm)

Ibanez 15.75inch(400mm)

個人的には、PRSが採用する10inchが最もバランスよくプレイできるように思います。ただ、PRSでもSilver Skyは7.25inchを採用しています。また、Suhrが採用している、ハイフレットに向けて徐々に指板がフラットになるコンパウンドラジアスも、理にかなっており非常に快適です。


さて、今回お預かりしたギターは、Fender / Custom Shop 1960 Stratocasterです。

ヴィンテージの息吹までも再現しているようなリアルさですので、指板のラジアスは当然7.25inchです。


「これくらいの弦高が弾きやすいな…」と思う高さにサドルを下げて調整すると、やはり14~15フレットで音詰まりが出ます。


これを解消するため、12フレット以上のハイポジションで、1・2弦をチョーキングした時に干渉しやすい部分のフレットを、少しだけフラットになるように意識して擦り合わせます。

名付けて ”なんちゃってコンパウンドラジアス” です。

イメージを描き表すとこのような感じです。

元のフレットに十分な高さがないと難しいですが、上手くいけば十分な結果が得られます。

それでは実際の作業をご覧ください。

[作業内容]

Bメンテナンス 12,000円

弦代金

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