乾燥が気になるこの頃

長年の経験上、3月は乾燥が原因で生じるトラブルのご報告が最も多くなります。

お住まいの地域差はありますが、やさしい日差しに包まれる日中は、外出することが苦ではなくなるこの頃。つい油断してしまいますが、実は真冬よりも乾燥が厳しい時期でもあります。

潤いは若さと健康に不可欠です。手肌がカサついたり、朝起きたら喉がカラカラに乾いているなど、空気の乾燥を体感する場面もあると思いますが、乾きを感じてから対応していては遅いと言われます。極端な話、湿った環境に長くいても死にはしませんが、渇きは数日で命に関わります。

ギターサウンドの魅力を表すのに「乾いた(枯れた)音に育っている」と言われることがあります。これは、音色の質感を言い表しているのであって、物理的に木材の含水率が下がって音が良くなったという意味ではありません。これを同じ意味だと信じておられる方は結構おられるようです。

サクッと軽い歯ごたえと、パサパサして飲み込みづらいとの違いでしょうか。


乾燥して木が縮むことで起こる代表的なコンディション変化をご紹介いたします。



■弦高の変化

ネックが逆反りしやすく、弦高が下がってビビリや音詰まりが生じる可能性が高くなります。ほとんどの場合は、トラスロッドの調整のみで改善するので、気になる症状があればお気軽にお持ちください。

■フレットのバリ

はじめての冬を過ぎた新しいギターに多く見られる症状ですが、指板が乾燥して縮むことで、指板の両端からフレットが飛び出して、ネックを握る手に引っ掛かりを覚えます。やすり掛けをしてバリを取ることで、元通りの弾き心地が得られます。

■アコースティックギターのボディ割れ

過度に乾燥が進むと、縮みに耐え切れずに木目に沿って板が割れてしまいます。または、ブレーシングやバインディングなどの接着部が剥がれてしまうこともあります。

転倒や落下が原因でボディやネックを破損したなら、少しはあきらめもつきますが、何もしていないのに割れていたというのは無情です。ギターライフで起こりうる最もショックな瞬間かもしれません。可能な限り元通り修復できる方法をご提案させて頂きます。


このコラムは、無用なトラブルを予防するための注意喚起を目的としています。ギターの取り扱いを難しいと感じさせてしまったり、過保護に扱われることになるのは本意ではありません。

その方法は人それぞれです。ギターのために湿度計を使って厳密に管理するのも良いと思います。私のように、自分が快適に過ごせる環境を意識するだけでも、ギターにも良い環境になっているはずです。

どれだけ気を付けていても起こる問題はありますので、気軽に遊び道具としてギターと付き合い、何かあればご相談いただければと思います。

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