弦についての考察(1)
ギターサウンドを生み出す源である弦ほど重要なパーツはありません。素材や製法、太さなどに様々なバリエーションがあり、製品の種類は把握しきれないほど存在します。そして、サウンドや演奏性に大きく関わります。
それだけに、語りたいことが山ほどあるのですが、一気に出してしまうと、お読み頂く皆さんも私自身も混乱必至なので、複数回に分けてまとめていきたいと思います。
今回は弦の太さにフォーカスして話を進めていきます。
弾いていると指が痛くなってしまう、ビビリが出るのを解消したいなど、弦高調整のご相談を承る際に、最初に確認させて頂くのは使用している弦の太さです。
そこで、皆さんは弦の太さをどのような理由で選ばれていますか?
このコラムをお読み頂いている方であれば、何か能動的な理由で選択されているのではないかと思います。
・ギター購入時に張られていた弦の太さから変えていない。
・所有するギターすべてに同じ弦を張っている。
・ギターごとの特性や目的に合った弦を使い分けている。
・とにかくパワーを求めて太い弦を使っている。
・サラリとした音色が好みで細い弦を使っている。
・手が痛くなるから細い弦を使っている。
中でも「手が痛いから・弾き易くしたいから」という理由で細い弦を選ばれている方は、現在のセッティングに改善する余地があります。もし、適切な弦高となるように調整すれば、弾きにくさは解消されますので、細い弦に逃げる必要は無くなるはずです。
それ以外にも弦の太さの違いによって起こる様々な要素を下記の表で見ていきましょう。
張りが強い太い弦では、押弦に少し力が要りますが、振幅が小さいためフレットに近づける(弦高を下げる)ことができます。また、蓄えられているエネルギーが大きいため最大音量が大きくなり、端的に言えばパワフルな響きが得られます。
張りが弱い細い弦は、押弦は柔らかくて楽になりそうですが、振幅が大きくフレットとの間にクリアランスを取る必要があり、弦高はやや高めになります。また、蓄えられているエネルギーが小さいため最大音量は小さくなります。これはデメリットではなく、小~中音量域での繊細な表現力の高さを備えることになります。
力は要るけど少し押さえるだけで良い前者と、力は要らないけど多めに押さえなければならない後者なので、弦をフレットに押さえるという動作で必要になる力加減は、トータルではそれほど変わりはありません。それよりは、プレイスタイルや押さえ心地の好み、ギターの特性から得られるサウンドの違いなどで選ぶのが正しいと思います。
エレキギターの場合などは、チョーキングする際に弦の太に応じた力が必要になりますが、慣れと頑張りでカバーできるはずです。
これまでご説明してきた内容は、あくまで平均的なセッティングの例であり、守らなければならないルールではありません。すべてはミュージシャンシップが優先されますので、あえてこれを逸脱したセッティングにするのも決して悪くはありません。
太い弦を高い弦高で弾くStevie Ray Vaughanは、タイトでラウドなサウンドを生み出していましたし、細い弦を低い弦高で弾くEdward Van Halenは、ブリリアントさとウォームさを併せ持つ素晴らしいトーンを持っており、両者ともプレイとサウンド両面で多大な功績を与えたヒーローです。憧れのプレイヤーと同じセッティングにして、彼らのプレイスタイルやサウンドを疑似体験しながら学ぶのも、案外近道なのかもしれません。
1本のギターの中には様々なサウンドが詰まっています。そこからどのような特徴を引き出しプレイヤーの個性を反映させるのか。弦の選び方を手段のひとつに使って頂くことで、ギターへの理解がより深まるのではないかと思います。