アコギのピックアップ選び(L.R.Baggs編)

ライブでアコースティックギターを使うために必須となるピックアップについて、使用環境やプレイスタイルに合わせた選び方を考えてみましょう。


ライブステージでアコースティックギターをプレイするなら装着が必須となるピックアップですが、生音(振動)を電気信号へ変換する方式にいくつかタイプがあり、それぞれに特徴があります。ご自身のプレイスタイルやギターのキャラクターを踏まえて選択すればイメージ通りの音が得られますが、選択を誤ると弾くたびにストレスになるため、慎重に検討する必要があります。


弊社でも取り付け実績が多く、高い評価を得ているL.R.Baggs社の製品ラインナップを例に、ピックアップの特徴を解説してみます。


[コンタクトピエゾ]

■iBeam

ボディ内部(多くの場合ブリッジの裏側)に貼り付けて、トップの振動をキャッチしてアウトプットするタイプです。トップ材の自然な響きが感じられ、癖のない素直なサウンド特性が魅力。最小限の加工で取り付けでき、ピックアップ自体が小型軽量なため生音への影響がありません。ハウリングには弱く大音量が必要な状況には不向きで、ひとりで弾き語りをされる方などにお勧めです。



[アンダーサドルピエゾ]

■Element VTC / Session VTC 

薄板状のピックアップをサドルの下に敷くことで、弦振動をキャッチしてアウトプットするタイプです。弦の音をダイレクトに再生するので、非常にタイトで明瞭なサウンドが得られます。大音量でもハウリングしにくく、エフェクトを使用した音作りとの相性も良好です。ピックアップの取り付けに際してサドルの加工が必要になります。箱鳴り感がしない(いわゆるエレアコっぽい音)ことは好みが分かれるところですが、バンドでプレイされる方にお勧め。Element VTCは、ボリュームとトーンコントロール付き。Session VTCは、ボリュームとトーンコントロールに加え、レコーディングスタジオで使われるようなコンプレッションとサチュレーションを加える高品質なプリアンプを備えたモデルです。



[マグネット]

■M-1 / M-80

サウンドホール部に取り付けて、弦振動とトップの振動を同時にキャッチしてアウトプットする新発想のマグネットピックアップです。マグネットピックアップらしい中低音が太く力強いサウンドを基本としながら、箱鳴り感も同時に得ることができます。ハウリングにも強いのが魅力。M-1は、適度な箱鳴りを伴う表情豊かなサウンドで、バンドや弾き語り向けの万能なキャラクター。M-80は、ボディの振動をより多く含み、ボディタップ奏法にも対応するソリスト向けです。ピックアップ自体に重量があるため、装着時にトップの振動をややミュートしてしまいますが、使わない時(生音で弾く時)は簡単に取り外すことができるようになっています。



[コンデンサーマイク]

■Lyric

高性能なコンデンサ-マイクをボディ内に設置し生音を集音することで、エアー感のあるアコースティックサウンドを再現します。従来のコンデンサーマイクはハウリングに弱く、他のピックアップとブレンドするための使用されるサブ的存在でしたが、Lyricは優れたハウリング耐性により単一で使える唯一無二の存在です。ピックアップのキャラクターが介在せず、生音をそのまま大きくしたような自然なサウンドを求める方にお勧め。



[ハイブリッド]

■ANTHEM / ANTHEM SL

ElementとLyric、2つのピックアップを搭載しブレンドします。Elementが力強くタイトな低音を、Lyricが中高音の透明感のあるナチュラルな響きを生み出し、あらゆる場面に対応する万能型のピックアップシステムを構成します。ANTHEM と ANTHEM SLの違いはコントローラー部にあります。ANTHEMは、フルスペックのコントローラーを持ち、全体の音量とマイクブレンド量をコントロール可能です。曲によって細かく調整したい方にお勧め。ANTHEM SLは、音量調整のみでマイクブレンド量は固定です。シンプルな操作性がお好みの方にお勧め。


ピックアップの取り付けには少なからずギターへの加工が必要になります。また、取り付けの精度がシビアに音質に影響するため、経験と技術を持ったショップへご依頼下さい。弊社では、一般のお客様からのご依頼はもちろん、メーカーや楽器店からのご依頼も多数承っております。ご検討中の方はお気軽にご相談ください。

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