弦についての考察(2)

弦高(=弾き心地やプレイスタイル)を決定するためには、下記の3要素の関連をある程度理解する必要があります。ある程度キャリアのあるプレイヤーなら、経験則として感じられている部分でもあるはずです。

  1. 弦の太さ

  2. チューニング

  3. 弦長


前回のコラムで ①弦の太さ の解説をしました。弦の太さの選択によって、弾き心地やサウンドにどのような違いが生まれるのかご理解頂けたかと思います。今回は残り2つを一気にやってしまいたいと思います。

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[チューニング]

ギターのチューニングは、比較的用途の広いオープンチューニング系や、ある曲を弾くための独自のチューニングまで、種類はほぼ無限にあります。ただし、実際には演奏する曲によってチューニングは決まっているものです。言い換えると、曲の雰囲気を決定づけるのもチューニングの役割のひとつです。


分かりやすい比較ができるように、スタンダードチューニング(以下STD)と半音下げチューニング(以下HSD)を取り上げます。ぜひお手元のギターでも検証実験をしてみてください。


普段はSTDで弾かれている曲を一度弾き、HSDにして1フレットにカポタストを付けた状態で、もう一度弾いてみてください。音程は同じであっても響き方の変化を感じられるはずです。張力が下がることで弦の振幅が大きくなることで、重厚さや豊かな響きが加わった余韻たっぷりなサウンドとなります。響きが良くなるなら良いことばかりかと言えば、蓄えられているエネルギーは下がるので最大音量は落ちますし、艶やハリが欲しい場合には物足りないかもしれません。前回のコラムでの弦の太さ比較にも通じるような変化があります。

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[弦長]

弦長は、3要素の中では唯一変更できないものです。一般的なギターの弦長は650~620mm程度で、メーカーはモデルごとに数種類の弦長を使い分けています。設計段階でギターのキャラクターを決めるため、ボディのサイズ・形状・使用木材などと共に、弦長も(もしかしたら一番)重要です。


もし、同じボディを持つ、弦長のみが異なるギターを比較できるなら、弦長が長いほど弦の張りが強く、太くタイトで力強いサウンドとなり、弦長が短いほど弦の張りが緩く、柔らかで温かみがあり表情豊かなサウンドとなります。


話のまとめに入ります。

実際にギターのセッティングを決めていく時には、これまでに解説してきた内容を、逆の順序で考えてみてください。

ギターの弦長は決まっています → 演奏する曲でチューニングが決まります → その弦長とチューニングで適切な張力が得られる弦の太さを選択します → 弾き心地の好みに合わせたベストな弦高になるように調整をおこないます。

ご自身のプレイスタイルと、弾き心地やサウンドがしっくり来ていないとお悩みなら、使用する弦の選定や弦高の設定をもう一度見直すことで、そのギターの新たな一面に出会えるかもしれません。


気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

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