カポタストという6本目の指のようなもの

カポタストっていうのはイタリア語らしいです。

カポタスト(以下カポ)を使用する目的は色々考えられます。主目的は自分の声域に合わせて曲のキーを上げることですが、初心者にとって押さえやすいコードに置き換えることもできます。また、インストゥルメンタルでは、様々なチューニングとカポを組み合わせることで、楽曲の雰囲気を作り出します。

カポの種類も様々で、メーカーがアイデアを凝らし、プレイヤーの細かな要求に応えようとしています。6本の弦を押さえるという目的は同じでも、形状 押弦力の調節方法 素材やサイズによる重量 などの違いが、使い勝手やサウンドの変化を生み出します。

趣味にまつわる製品の常で、こだわりを持って選ばれる方も多いと思います。私自身は、それほどカポにこだわりはありませんが、それでも何種類も使ってきた経験はありますし、お客様にお勧めする立場でもあります。

という訳で、今回は代表的なカポを紹介させて頂きます。製品の特徴と簡単な使用感をお伝えすることで、皆さんのカポ選びの参考にしていければと思います。


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[SHUBB : C1]

材質/ブラス 重量/50g

80年代に登場して、一躍カポのスタンダードとして認知されるようになったシャブカポです。私が初めて買ったカポはC1だったと記憶しています。テコを利用したシンプルな構造で、操作性と耐久性は抜群。替えゴムも販売されており、長く使ってほしいというメーカーの姿勢が素晴らしいです。片持ちタイプでありながら、ネック裏から均一に押弦力を伝えることができます。弾性に優れたゴムが、弦を指で押さえているかのような自然なサウンドを生み出します。

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[SHUBB : L1]

材質/アルミニウム 重量/23g

シャブカポは、同じ構造で素材違いのモデルを用意しており、重量の変化がサウンドに与える影響をストレートに体感することができます。L1はアルミニウムを使用して約半分の重量になっています。また、ここで紹介していませんが、S1(ステンレス製)もあります。

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[Jim Dunlop : Victor Capo]

材質/ブラス 重量/53g

押弦力を調節しやすいネジ式で、重量感のある武骨なつくりです。ネジのピッチが大き目で、ガバッと開いてガシッと締まる感じです。その適度な重さが功を奏し、腰の据わったサステインの効いたサウンドを引き出すことができます。写真のものは長年使い込んだ私物です。ネック裏に当たるゴムを革に張り替えています。新品時は磨き上げられた真鍮の輝きがあり、もっと綺麗です。

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[D’Addario : NS Capo Pro]

材質/アルミニウム 重量/24g

ヘッドレスギターの開発で知られるNed Steinberger氏が考案したカポ。上記のVictor Capoと形状は似ていてもキャラクターは真逆といえます。ネジのピッチが細かく動作が滑らかで、繊細な押弦力の調整が可能。金属製のカポとしてはかなり軽量で、明るくオープンなサウンドを引き出すことができます。※こちらは旧タイプのもので現行品とは若干形状が異なります。

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[G7th : Performance Capo]

材質/不明 重量/77g

独自のラチェット機構を内蔵し、指で押さえた力がそのまま押弦力に反映される発想が素晴らしい。使い慣れてしまえば、着脱ともにスピーディかつ適切な力加減に調整できる。ずっしりと重量があり、それがギターサウンドに上乗せされたような重厚感を生み出します。※こちらは初代です。現在は3世代目に進化しています。

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[Kyser : The Quick-Change Capo]

材質/アルミニウム 重量/42g

今回唯一のエントリーとなるバネ式(洗濯バサミと同じ構造)のカポは、とにかく着脱のスピードが命。それが名称にも現れています。バネの力に頼っているため、押弦力がネックの厚さによって変わってしまうというデメリットがありますが、実際に使ってみてシビアにそれを感じる場面は少ないです。それくらい絶妙なバネの強さです。鮮やかなカラーや柄のモデルも多数用意されており、若者に人気があるため入門用と思われがちですが、こだわって使われている熟練した方なら、曲中に瞬時に転調するトリックも可能です。

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[D’Addario : NS Cradle Capo]

材質/ステンレス 重量/23g

ネック裏の中心にネジが位置し、1弦側と6弦側に均等な力を加えることができるD型のカポ。チューニングの安定感に優れ、ビビリの少ないクリアなサウンドを得やすいことが魅力です。ネックを囲む形状ゆえ、着脱にひと手間かかりますが、使用しない時にはナットの上に付けておく方法もあります。剛性の高いステンレス製で、細身なつくりで極めて軽量に仕上がっています。カポが介在していることを感じさせない、ナチュラルな音が得られます。

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[SHUBB : F1 Fine Tune Capo]

材質/ステンレス 重量/37g

上記のNS Cradle Capoを同じD型のカポ。こちらはSHUBBが最高品質を目指して製作するプレミアムなモデルです。各部が滑らかに面取りされ磨き上げられたステンレスの仕上がりの美しさ、繊細な調整がスムーズに行えるネジピッチ、操作しやすいノブの形状、最適な固さのゴム、軽すぎず重すぎずの重量バランスなどを高いレベルで融合しています。所有欲を満たす、見て・触れて・使って良しな逸品です。


ここでは紹介しきれませんが、数百円で買えるゴムバンドのようなカポでも、使いようによっては結構いい仕事をしてくれますので侮れません。逆に高級品でも自分のギターとプレイスタイルにはしっくりこない場合もあります。たまに友人の使っているカポを借りてみると面白い発見があるかもしれません。

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