メンテナンス関連でよくある10の質問
[目次]
どれくらいの弦高がお勧めですか?
AメンテナンスとBメンテナンスの違いは何ですが?
メンテナンス依頼時に伝えておくべきことは?
トラスロッドが動かないギターは調整できますか?
フレット交換の時期はどのように判断すればよいですか?
ナットやサドルの材質について教えてください。
ペグやブリッジピンを替えると音が変わりますか?
トップが膨らんでいるように見えますが、問題ありますか?
ボディの木材の割れはどのように修理しますか?
ネック折れはどのように修理しますか?
1.どれくらいの弦高がお勧めですか?
当店でメンテナンスを承る際には、スチールギターなら12フレット上で 6弦2.5mm 1弦2.0mm を基準としています。フィンガースタイルで弾かれるなど低めがお好みでしたら、6弦2.3mm 1弦1.8mm くらいまで下げても良いでしょう。
ナイロン弦でしたら、6弦3.5mm 1弦3.0mm を基準にしています。
ともに、ライトゲージを使用したレギュラーチューニングの場合の数値です。弦のゲージやチューニングが変わる場合は、お勧めの弦高も変わります。
2.AメンテナンスとBメンテナンスの違いは何ですが?
Aメンテナンスでは、弦高に関わる3点(ネックの反り、ナット溝の深さ、サドルの高さ)を最適化することで、どのフレットポジションでも均一に押さえやすい弾き心地とします。
Bメンテナンスは、Aメンテナンスに追加してフレットの擦り合わせをおこないます。特に弦高を低く設定したい場合には、フレットのわずかな凹凸が音詰まりやビビリの原因となるため、それを軽減することができます。
3.メンテナンス依頼時に伝えておくべきことは?
使用する弦のゲージ 主にプレイするチューニング 指弾きorピック弾き ピッキングの強さ 改善したい内容(こもった音をスッキリさせたい 弾きやすくしたい等) ビビリがある場合には具体的な弦とフレット位置 その他にもギターについて気付いたことから、お好きな音楽や雑多な話題まで、何でもお伝えください。
4.トラスロッドが動かないギターは調整できますか?
トラスロッドのネジを締めきっており、これ以上は順反りを修正できない状態なら、調整は可能です。そのためには、一旦トラスロッドを緩めてネックを順反りにし、ネックアイロンを使用して反りを矯正します。そこから再びトラスロッドで調整することで、以前ほどトラスロッドに頼ることなく、調整幅の余裕をつくることができます。
トラスロッドが動かない原因が、ネック内部で固着している場合は非常に難しいです。油を差して改善することもありますが、力まかせに回すのはリスクが高いです。どうしても直したいなら、指板を剥がしてトラスロッドを交換するなどの大手術になると思います。
5.フレット交換の時期はどのように判断すればよいですか?
よく使うポジションからフレットが凹んできます。2弦と3弦の1~3フレット辺りが多いと思います。フレットが凹んでくると、音の明瞭さが足りなくなったり、音詰まりを感じます。フレットの擦り合わせを行うことで改善されますが、擦り合わせは高さを削る作業なので2~3回が限度です。高さがないフレットは、弦を押さえる力が余分に要るようになりますので、それにストレスを感じたら交換しましょう。
6.ナットやサドルの材質について教えてください。
古くは象牙が使われていましたが、現在の主流で弊社が使用しているものは、天然素材の牛骨が2種類、合成素材のTUSQ(人工象牙)が2種類あります。
目にする機会が多いのは、漂白された牛骨だと思います。音色は適度に高音域が丸められており、中低音が出ているように感じられます。どっしりと落ち着いたサウンドを求める場合に向きます。
無漂白の生成りの牛骨は、素材由来の油分を含み、潤滑性が高いためチューニングの安定に僅かながら効果を期待できます。漂白された牛骨よりもわずかに高音が出ているように感じられます。
ナット・サドル用の合成素材としてスタンダードとなったTUSQは、天然素材のような密度や硬度の個体差が無く安定しています。低音域から高音域まで、淀みのないクリアな響きを引き出すことができ、耐摩耗性や潤滑性にも優れており、非常にバランスの取れた材質です。
TUSQにテフロンを配合したTUSQ XLは、弦振動を受けるとテフロン分子が放出され、優れた潤滑性を発揮します。チューニングの安定に効果がありますので、トレモロユニット搭載のエレキギターのナットとしてお勧めです。
7.ペグやブリッジピンを替える音が変わりますか?
弦振動の支点となる、ナット・サドル・フレットほどではありませんが、弦の延長線上にあるペグやブリッジピンもギターサウンドに何らかの影響を与えています。分かり易いのは重量を大幅に変えた場合です。
例えば、オープンギヤの軽量なペグから、ロトマチックタイプの重厚なペグに替えると、弦振動が逃げにくくなることでサステインが増します。音色の密度が高まったようにも感じられます。似たような効果は、重いカポタストをヘッドの先端にギュッと挟んで固定しても感じます。
逆に、軽量なペグに替えると、軽やかでオープンな響きとなり、音色の中の木材由来の温かみが強くなったようにも感じられます。
ペグの反対側に位置するブリッジピンも、きっと同じ効果があると思いますが、いかんせんパーツ自体が小さいので変化も小さいです。しかし、気軽に替えられるので、色々と試してみるのも面白いです。
8.トップが膨らんでいるように見えますが、問題ありますか?
アーチトップギターと区別するために「フラットトップギター」とも呼ばれますが、実際のトップ板は平面ではありません。ブリッジを頂点とした緩やかな膨らみがあります。この膨らみはブリッジが受け取った弦振動を、効率よくトップ面に広げる役割があります。また、ドーム球場の屋根 車のボンネット 太鼓橋などと同じで、膨らみをつけることで構造強度が高められています。今の弦高が適切であるなら、トップの膨らみ自体は問題ではありません。それでも気になるようでしたら、ブレーシングの剥がれがないか診断をさせて頂きます。
9.ボディの木材の割れはどのように修理しますか?
修理作業の大まかな流れをご紹介します。割れた部分に接着剤を塗布して、段差がなくなるように押さえて固定します。割れがひどい場合はボディ内部から補強を貼ります。接着剤が乾燥したら、塗装を研磨して表面を整え、下地 中塗り トップコートと塗装を重ねます。着色や仕上げの研磨が入ることもあります。
10.ネック折れはどのように修理しますか?
実は、ボキッと折れてしまっている方が修理しやすいです。割れた断面が大きい=接着剤を塗布する面積が大きく取れるので、しっかりと強度が得られます。亀裂が入った程度のものは、亀裂に接着剤を流し込むようにして固定します。接着面積が小さい場合は、木材やボルトを埋め込んで強度を確保することもあります。修理痕を目立たなくするため、ネックの裏を元よりも濃い色に着色して仕上げます。