115このギターは個性が渋滞中です(strandberg / boden TT 7弦)
Strandbergのギターをお預かりしました。
ヘッドレスのコンパクトなデザイン、True Temperamentフレット(TTフレット)、左右非対称の台形断面のネック、7弦仕様という、どこから語れば良いかと迷うほど個性が渋滞しているギターですね。
日頃からコンサバティブなギターばかり弾いている自分には、SF映画の世界から持ってきたギターように見えてしまい、一旦は距離を感じてしまいます。
お客様のお話では、他のショップにメンテナンスの依頼したところ、あまり満足できる結果が得られなかったとのこと。また、ご自身が妥協できない性格で、高度な要求をしている事も自覚されており、無理な願いなのかと諦めかけておられました。
そういった思いを伝えられますと、私はモチベーションが俄然高まってしまいます。
珍しい形だとしてもギターはギターです。どんなプレイスタイルであろうと、左右の手でギターを弾くことには変わりありません。つまり、やるべきことは同じはずです。
ギターをチェックしていきましょう。
まずは特徴的なTTフレットです。すべてのフレットが複雑に湾曲しています。これによりギターが構造上持っているピッチの不正確さを解消していると言います。
ネックは軽い順反りですが特に問題はありませんでした。それよりも気になったのはフレットの高さのバラつきです。特殊な形状のせいで均一に打ち込むこと難しいではないかと想像します。TTフレットを採用する別のギターにも同様の問題を見たことがあります。
ネックの順反りを修正します。ストレートになったことで、フレットの高さのバラつきによる音詰まり感が顕著になりました。
サドルの高さを調整します。側面からネジで固定されているので、これを緩めてからサドルを上下させます。
調整前後のサドルの高さを比較します。かなり低めにしました。もちろんこのままではビビリが酷いです。
オクターブピッチを調整します。こちらもネジで固定されていますので、作業は非常にやりにくいです。一度完璧な調整をしたら狂わないので、何度も触る必要はないという考え方なのだと思います。
指板をマスキングしています。フレットが湾曲しているので、デザインナイフでテープをカットしました。
フレットを削って高さを揃えていきます。
フレットの表面を滑らかに磨き上げました。
弦高に合わせてピックアップの高さも整えます。
調整前の弦高は7弦2.1mm/1弦1.7mmで、調整後の弦高は7弦1.7mm/1弦1.3mmになりました。試奏してみると音色は意外なほど癖がなく、どんなジャンルにも使えそうな素直さがあります。弦高が低くなりながら音詰まりは解消でき、正確なピッチが生かされたクリアな響きを引き出せたと思います。
やや苦戦するところもありましたが、またひとつ勉強をさせて頂きました。お客様には大変喜んで頂くことができ、良い仕事ができたと自己満足しています。
[作業内容]
Bメンテナンス 12,000円
弦代金