ナットとサドルの素材選び(TUSQと牛骨について)

ナットやサドルの交換を承るときには、使用する素材を選んで頂きます。

TUSQ(タスク)と牛骨がありますが、「どのように違うのかわからない」というお声を頂くことも多いので、ここで両者の特徴をまとめて解説したいと思います。


▼順序立てて考えていきましょう。


①使用されているナットやサドルの素材.

実は分からないというお客様も多くいらっしゃいます。スタート位置を明確にするために素材を確認しましょう。


②今の音に満足しているか、変化を求めるのか?

満足されているなら素材を変える必要は全くありません。


③変化を求める場合は、どんな希望があるか?

どんな不満があり、こんな音を引き出したい、という明確な希望があれば素材選びは簡単です。


▼各素材の解説

[TUSQ]

ひとことで言えば、最も普及している人工象牙です。入手が難しくなった象牙の代替品として、米GraphTech社が開発した素材です。素材を叩くと磁器のように透明感のある音がします。ギターに取り付けてもその印象は変わらず、全音域で解像度が高く、クリアで明るい発音が得られるのが特徴です。高圧で成形される合成素材ですから、密度が均一で誤差がなく安定したパフォーマンスを発揮します。また、耐摩耗性はありますが、切削加工性にも優れており、リペアマンとしては扱いやすい素材です。

[牛骨]

象牙が使用できなくなって以降、骨・金属・ナイロン・プラスチックなど様々な素材が試されてきましたが、ギターメーカーやプレイヤーに受け入れられ、スタンダードな素材となったのは牛骨でした。音色は中庸で、目立ったところがないことが特徴だと思います。TUSQや象牙と比べて落ち着いた音になります。無視できるレベルですが、自然素材ですので密度や硬度に多少のばらつきがあります。しかし、アコースティックギターなどでは、オーガニックな素材のイメージから好まれる方も多いです。加工性はTUSQより悪く手間がかかります。

ここまでお読み頂ければ、ご自身が求める素材はどちらなのかおよそ決まると思いますが、選ぶ目的がもっと明確になるようにリスト化しました。


▼その他


パーツ製作料金は、加工性の良し悪しを元に算出しますので、TUSQよりも牛骨の方が高いです。料金と素材の優劣は無関係です。


音色の変化を求めて素材を変更する場合、より効果が発揮されやすいのはサドルです。サドルはすべての音を鳴らすときの弦の支点となり、ボディに振動を伝える役割を担うからです。対して、ナットは開放弦にしか関与しませんので、音色の変化においては効果を感じにくいかもしれません。


また、アコースティックギターのナットとサドルは同素材が使用される場合が多いですが、エレキギターなどのサドルは金属が一般的ですし、必ずしも素材をそろえる必要はありません。


参考になれば幸いです。

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